小児科ブログ〜「無理かもしれない。もうちょっとしたらできるかもしれない。」子育てにおける”子どもの最近接領域”
2025.03.27「無理かもしれない。もうちょっとしたらできるかもしれない。」
子どもを育てている中で、我が子に、「〇〇は、まだこの子には無理。」と思うことがあるかもしれません。「この子には、まだボタンを自分ではめるのは無理。」、「まだ自転車に補助輪なしで乗るのは無理。」食事場面、お稽古・・・もう少し大きくなれば、もっと種類が広がっていきます。勉強、友達関係・・・数え上げればキリがありません。私も、日常生活の中で、急いでいるときほど、「まだ〇〇は無理だから、出来ないでしょ。やってあげたほうが早い!」と思いがちです。
あるとき、年上の女性のお稽古の先生から一言。「もうちょっと待ってあげて。出来かけているよ。」と声をかけられたことがあります。「靴紐を結んであげるのが最初。靴紐を結んであげるのをちょっと手伝ってあげるのが次。さらに、靴紐を自分で結べるようになるまで、隣で座ってみているだけが最後の段階。みんな、お母さん、最後の見ているだけが苦手な人が多いんですよ。」と言われたことがあります。確かに・・・思い当たる節が沢山あります。
子どもが一人でならできる限界のラインと、今はまだ出来ない限界のラインの中間に広がる「発達の最近接領域」というゾーンがあります。ヴィゴツキーという学者が提唱した概念です。

ここは、少し年上の友達や兄弟、大人のヒントや手助けがあると、本人にとっても“思いがけず” 手が届くゾーンです。大事なのは、子どもが一人でできるラインの経験を積ませて自信をつけること、その次に、今取り組んでいることについての「発達の最近接領域」のゾーンがどのあたりにあるかを周囲が見極めて、そこを “少しだけ” 手伝ったり、ヒントをあげて、見守ることだそうです。
自分でも、日々の育児の中で、思い出して実践するのは中々難しいですが、何かにトライしてもがいている子どもを見たときに、「無理」と「もうちょっとしたらできる」の間に広がるゾーンがあることがヒントになるかもしれません。
ひでまるファミリークリニック
小児発達部長 かぶらき まきこ